ルクレール記念館 + ジャン・ムーラン博物館

日本人にとってはマイナー感のある博物館だが, 見る価値は十分. 地球の歩き方の地図(だけ)に載っているし, Métro Monparnasse-Bienvenuë の構内には矢印のある表示がでている. 正しくは

  • Mémorial du Maréchal Leclerc de Huteclocque et de la Libération de Paris (ルクレール・ド・オートクロク元師とパリ解放の記念館)
  • Musée Jean Moulin (ジャン・ムーラン博物館)

の2つだが, ほとんど一体に思える. 左右対称の建物の左右に1それぞれがはいっていて, その上に載っている2階の映像スペースでは, パリ解放のときのパレードの画像などを横に巨大なスクリーンに流している.
Mémorial Leclerc et de la Libération de Paris - Musée Jean Moulin - Paris.fr http://www.paris.fr/portail/Culture/Portal.lut?page_id=6923

アクセス

いってみればGare de Montparnasseの線路部分の屋上あたりにあるのだが少しわかりにくい. Gare de Montparnasse2, Hall Pastur の側から, Jardin Atlantique を通っていくのがいちばんわかりいい? このJardinはテニスコートなどもあるが人気が少なくて少し怖い.
Avenue du Maine側から塔状のエレベータで上がる(止まっていることもある), Gare de Montparnasse のホーム群の左端(voie 3 TGV)の階段を上がる, という行き方もある.

Leclerc って誰?

Leclerc は, Charles de Gaulle のもとで働いた自由フランス軍の軍人で, Normandie 上陸のJour-J(D-Day)には参加しなかったが, その後, 第2機甲師団を率いて西部戦線で戦い, 政治的配慮から?パリ解放の先陣をつとめた. フランス降伏のころは第3共和制のフランス軍の下級将校だったが, イギリスに脱出してde Gaulleの自由フランスに合流して最終的には将軍になる. 第2次世界大戦で, 軍の正規の枠組み外の勝手な昇進が起こったのは, フランスぐらいか. ポーランドの亡命政府は正当な政府とつながっていたはず.

フランスのどこの街に行っても, Leclerc通りがある気がする. 当時それだけヒーローだったということだろうか. ただし, Leclercはフランスではありがちな姓のようなので(supermarchéにもLeclercというのがある), 彼の名前をつけたものがすべてではないのかも. だいたい, 彼自身ありがちな姓を偽名として名乗ったのだろう.

1947年軍務中に飛行機事故死.

Jean Moulinって誰

第2次世界大戦前は, 非常に若くしてフランスの地方の知事を務めた政治家だったが, 自由フランスのde Gaulleの指令?依頼?でフランスにパラシュート降下して, ばらばらだったレジスタンス組織を統合して, 自由フランスの指揮下に置く. Jour-J(D-Day) 以前にNazisに逮捕され殺される. (政治的にはどんな位置どりだったのかよくわからない. 彼自身は共産党員ではなかったみたい)

Parisでは14区にAvenue Jean Moulinがあり, それと交わる地点にTram T3のJean Moulin駅がある.









名前と趣旨の不思議

というわけで, 2人ともParis解放に関わる重要人物なのは確かなのだが, なんで前者はMémorialで後者はMuséeなの? なぜパリ解放は前者にくっついてるの? Moulinは解放前に死んだのに対し, Leclercは自らの師団でまさに解放の瞬間に貢献したから? Charles de GaulleやPCF=共産党も解放に貢献したと思うけど政治はとりあえず除外?

なぜMusée Charles de Gaulleはないの?

Paris解放に関しては, この2人の上官ともいえる最大の貢献者がCharles de Gaulle シャルル・ド・ゴールなわけだが, 彼に焦点をあてた博物館というものはずっとなかった. もちろん, その名前はEtoîle広場をはじめとしていろいろな地名につけられているが. 彼は, その後, 共和国大統領としていろいろなことをやっているので, 1940年代に死んだ2人と違って, 評価が複雑だし, 近い後継者である保守の政治家たちが積極的に動くことができなかったということかもしれない.

これまで唯一例外としてde Gaulleを扱った博物館と言えたのは, Les Invalides のMusée de l'Arméeの横にあるMusée de l’Ordre de la Libération フランス解放勲章博物館. これは1967年にde Gaulle自身によって設置された, フランス解放の貢献者についての展示(間接的な特徴づけ…). de Gaulleのl'Appelの原稿なども見られる.

En 1967 l’Ordre de la Libération, sur décision de son fondateur et Grand-maître, le général de Gaulle, s’installe dans l’Hôtel national des Invalides.

また, Musée de l'Arméeには, 2006年になってやっと, 第1,2次世界大戦を扱うパートができた. 年代的にはなぜか普仏戦争もはいってる…

Le1er juillet 2006, DEPARTEMENT DES DEUX GUERRES MONDIALES 1871-1945 - programme de modernisation ATHENA Le 1er juillet, les nouvelles salles d’exposition permanente du Département des Deux Guerres mondiales, 1871-1945 ont ouverts au public. E

話をもとに戻して, この記念館+博物館は, de Gaulle派の流れを汲む, Paris市長Jacques Chiracと首相Édouard Balladurの主導で1994年に設置されたもの. 部下に敬意を十分払った後で, Nicolas Sarkozyは積極的に動くことができるようになったということか, 2008年にいくつかの動きがあった.

2月, やはりLes Invalides の地下に, Charles de Gaulleの生涯に焦点をあてた展示スペースが作られ, 特別展が開催.

Historial Charles de Gaulle Ouvert depuis le 23 février 2008 Le 22 février 2008 aux Invalides, l'Historial Charles de Gaulle a été inauguré par le Président de la République.

10月, Charles de Gaulleの出身地のColombey-Les-Deux-Églises に記念館が開設. 式典には独仏の首相大統領が駆けつけた. Parisから車で3時間. いかに生地とはいえ, もうちょっと便利なところに作ったほうがよかったのでは.

http://www.memorial-charlesdegaulle.fr/

11月, Sarkozy大統領が, フランスの歴史に関する博物館の建設を表明. 場所は未定だがVersaille説あり. 当然, Charles de Gaulleは大きく扱われることになるだろう. このニュースに関しては, 同時に表明された, 学生と教育関係者(外国人は?)は国立博物館無料, のほうが大きく報道された. 博物館無料については以下でもう一度.

Soucieux de renforcer l'identité nationale, le président Nicolas Sarkozy a annoncé mardi la création prochaine d'un musée de l'Histoire de France.

しかし, 日本語ではde Gaulle回想録も絶版だし, 伝記のたぐいも読めない. Amazon.co.jp で検索すると, フランス海軍の空母のプラモデルやドゴールキャップ(これは日本独自の最近の言い方ですね. Leclercもかぶってるフランス陸軍の礼装の制帽なんですけど…一昔前は(Major Leagueの)パイレーツ帽って言ってた気がする)がヒットした.

レジスタンス博物館

地方の町には, 時々
Musée de la Résistance et de la Déportation
というのがあることがある.

また, 第1次, 第2次世界大戦に出征したその町出身の軍人の記念碑, というのはよく見かけるが, あわせて, レジスタンスで亡くなった人々の記念碑, というのもあることが多い.


また, 国立のものとしては

Le Musée de la Résistance Nationale est un réseau de musées présents dans toute la France conservant et exposant une collection unique contrôlée par la Direction des Musées de France et dévolue aux Archives Nationales. Ces musées sont gérés et soutenus par des associations loi 1901, fédérées en une association nationale du Musée de la Résistance nationale.

というのがある.

博物館の有料モデル無料モデル

ところで, この記念館+博物館は入場無料. ここを含むパリ市立の博物館は原則無料ということらしい(例. パリ市立近代美術館, 例外. Catacombes, Musée Galliera).

http://musees.paris.fr

びっくりするのは, 無料にもかかわらず, チケットの窓口があって, 0€というレシートを印刷して発行してくれるということ. 無料にすることによるコストカットのメリットを全く放棄しているし, 森林資源にもやさしくない…有料の特別展に備えて人員が配置されてるのか, 入場者をカウントするために必要なのか.

ちなみに, ドイツの博物館で, 有料だが, 入場券がなく, 手に特殊インクでスタンプを押してくれるだけ(日本でも再入場用によくつかわれてる)のところに行ったことがある.

一方, イギリスの国立博物館は原則無料というか寄付制になっているというのは有名. Franceでも, たぶん文化的というより観光的考慮から無料にしている町もある. たとえばDijon.

ところで, Franceの国立の博物館やモニュメントは無料ではない.

http://www.rmn.fr/

しかし, 2009年1月, Sarkozy大統領が25歳未満と教育者は無料にすると言い出した.

Nicolas Sarkozy a annoncé mardi un accès gratuit aux musées et aux monuments de l'État pour les moins de 25 ans ainsi que pour les professeurs.

すばらしい. こういうのが, 大統領が言うだけでほぼ決まりになってしまうというのがすごい. 18歳の1年間の新聞代を政府が払ってくれるとかね〜. しかし, これが国外の学生にも適用されるんだったら地球の歩き方は改訂で大忙しですね.