Vista 64bitで電子辞書EX-Wordの古い追加コンテンツが扱えなくなった

2005年に発売されたCASIOの電子辞書EX-Word DATAPLUS2 XD-LP9200を使っている. 2011年度はDATAPLUS6だから4世代前. DATAPLUS2で画期的だったのは, CDROMで売られる追加コンテンツを, 何個でも容量の許すかぎりPC経由で追加できるということだった. SDカードによる追加コンテンツと比べたときの優位性は明らかだった. そこで仏和/和仏辞典XS-OH05をはじめとしてコンテンツを買いためてきた.





今ごろVista

今週, ついにWindows XP Professional SP3を引退させ, Windows Vista Business Edition 64bit (Windows7でないのには理由があるのです)に移行した. このとき追加コンテンツを管理するEX-wordライブラリというソフトウェアを移行する必要があった.

EX-wordライブラリというのは言ってみればSonic Stageみたいな不自由なコンテンツ著作権管理のためのライブラリである. 1台の電子辞書ハードウェアは, 1個のPCの1個のEX-wordライブラリとだけ紐づけられる. 追加コンテンツはCD-ROMから専用インストーラでEX-wordライブラリ管理下にインストールする(シリアルナンバーを要求されるだけなので, 複数のEx-wordライブラリにインストールするのは違反だができてしまうだろう). この仕組みはDATAPLUS6に至るまで変わっていない.

EX-wordライブラリにはVista64bit版が出ている(DATAPLUS6に至るまでバージョンアップしつつ単一のソフトウェアで対応しているのでそうだろう). 追加コンテンツをEX-wordライブラリにインストールしようとすると…認識しない. 追加コンテンツの辞書データフォーマットが古くてDATAPLUS2の電子辞書ハードウェアにしか対応してないのはわかるが, OSやPCソフトウェアはデータフォーマットを解釈するのでなく転送するだけなのにそんなことあるの? と思ったら, 追加コンテンツのインストーラがVista64bitに対応していないのだった(Webにちゃんと対応/非対応表が出ていた. Vistaにする前に読めって?) 実はこのインストーラは, EX-wordライブラリのバイナリ, 追加コンテンツのデータ, インストーラが不可分になっているものなのだった.

プログラムとデータを分離しない悪い例. 読み込みの機能はEX-wordライブラリに持たせて(そして今やっているようにWeb配布で無償バージョンアップして), メディアごと売るCDROMにはDRM下のデータだけいれておけば, EX-wordライブラリの動くOSでは過去のコンテンツすべてが使えるはずなのに.

でも, ひょっとして意図的なのかなとも思う(以下).

自分を守ろう

辞書好きなので, 電子辞書が初めて出てきたときはかなりテンションが上がった. 初めて買った頃は, 紙の辞書と違ってbindingが壊れたり紙が破れたりするわけじゃないんだし, 一生この1台で済むのではないかと思った. 当時は辞書の中身が古くなるほど自分が長く生きるということに気づいていなかった(辞書の更新のサイクルが速くなってきていることもあるが)

現在は, 辞書の中身も古くなるしキーボードも壊れるとわかっているが, 追加コンテンツがこんなに早く使えなくなるのは想定外だった(いや, 古いXPをEX-wordライブラリ専用マシンにしたので使えてるんですけどね).

今後はproprietaryな電子辞書専用機に頼っていくのは考えものかも. だって, 1990年代に出た電子ブックやEPWINGフォーマットの辞書コンテンツが今でも使えてるのを見てみて. 使用許諾的には微妙なところもあるがEPWINGへの変換ツールを提供してくださるコミュニティが存在するのが大きい.

現状の自衛策.

  • なるべくEPWINGに変換できる辞書を買って, iPhone,iPad,PC,AndroidなどのEPWING Viwer, 例えば EBPocketから使う
  • pdf,epub,mobipocket,kindle,htmlなどの電子書籍フォーマット, 著作権管理に従う辞書を電子書籍デバイスで使う
  • 欧米ではメジャーな, mobipocket フォーマットの電子辞書を読めるハードウェア Franklin のようなものを使う(日本ではSEIKO ネットワーク電子辞書 DB-J990などとして出たが, 後継はでてない)

こういう発想自体古い? 辞書コンテンツがどんどん安くなって(無料になって), あるいはサブスクライブモデルになって, どの規約, 仕様がよいかはマニアックな話になっていくのかも. 辞書ごとにiPhoneアプリになってるやつを100円で買っちゃえみたいな.

電子辞書をめぐる悩みは, 電子書籍をめぐる深い悩みの中に埋め込まれていく, あるいはその中で解決されていくのかもしれません.





コンテンツ業者を守ろう

電子辞書専用ハードウェアには実に多数のライバルが存在している.

  • Web(subscribe,無料)辞書
  • Web翻訳サイト
  • 携帯プレインストール辞書
  • iアプリ辞書
  • PC用HDD(プレ)インストール辞書 (3300円のMac OS XにはNew Oxford American Dictionary, 大辞泉, プログレッシブ英和・和英中辞典がついてくるんですよ. 一方MS Bookshelf, それにこれは事典だが, 何万円もしていたMS Encartaは終了)
  • Kindle book辞書
  • iPhoneアプリ辞書
  • 紙の辞書についてくるおまけCDROM

しかし,電子辞書専用ハードウェアは強い. 非常に成功した電子書籍と言える. 毎年毎年, 高等学校や大学やに入学する学生が大量に購入している. データが非常に強くハードウェアに紐づけられているため(上記の追加コンテンツはその紐の弱い位置), コンテンツ業者が安心してデータを出せるのだろう. 教員が「携帯の辞書を授業中に使うのなんてとんでもない」と言ってくれることもある(電子辞書専用ハードウェアまで禁止する人もいるが). それに, 本質的なバージョンアップではないのに, 辞書コンテンツの数や質をよくしたり, 液晶画面を1枚増やしたり, いろんな工夫で, 「お姉さんのお下がりでいいや」と思わせないようにしている. このサイクルをどこまで回していけるか.